月読|つきよみ 第六篇

第六篇 孤月|こげつ
内観
光が増えるほど、
見えるものも増えていきます。
新月の暗闇を越え、
小さな兆しが現れ、
月は少しずつその光を取り戻してきました。
そして今日、
月は上弦を迎えます。
光と影。
その両方を、
ひとつの月の中に抱えた姿。
第六曲「孤月」に込めたものは、
内観。
前回の「月暈」では、
幸運について綴りました。
幸運とは、
完成した形で突然届くものではなく、
まず、
小さな兆しとして現れるのかもしれない。
その光に気づき、
ほんの少しそちらへ歩いてみる。
けれど、
兆しが見え始めたときほど、
一度立ち止まることも大切なのだと思います。
外側に現れた光をただ追いかけるのではなく、
その光を見たとき、
自分の内側で何が動いたのか。
そこへ目を向けてみる。
心が動いたのか。
身体が軽くなったのか。
なぜか惹かれたのか。
あるいは、
少し怖くなったのか。
答えは、
外側の出来事だけにあるとは限りません。
同じ出来事を見ても、
心が動く人もいれば、
何も感じない人もいる。
だからこそ、
本当に読むべきものは、
出来事そのものよりも、
それを受け取った自分なのかもしれません。
内観という言葉には、
自分の内側をじっと見つめる響きがあります。
けれど、
自分を分析することとも、
自分を裁くこととも、
少し違うように感じます。
良い。
悪い。
正しい。
間違っている。
そうやって判断する前に、
ただ、
今ここにあるものを見る。
嬉しいなら、
嬉しい。
苦しいなら、
苦しい。
何かに引っかかっているなら、
そこに引っかかりがある。
すぐに直そうとせず、
すぐに答えを出そうとせず、
まず、
そのままの形で見てみる。
それだけで、
自分でも気づかなかったものが少しずつ輪郭を持ちはじめます。
今日の月は、
とても象徴的です。
半分は光。
半分は影。
けれど、
光っている半分だけが月なのではありません。
影になっている場所も含めて、
ひとつの月です。
私たちもまた、
同じなのかもしれません。
自分の中にある、
見せたい部分。
見せたくない部分。
好きな自分。
認めたくない自分。
明るい場所。
まだ光の届いていない場所。
どちらか一方だけを選んで、
「これが自分だ」と決めなくてもいい。
光も、
影も、
どちらもそこにある。
そして、
その両方があるからこそ、
ひとつの輪郭になる。
内観とは、
影をなくすことではありません。
むしろ、
影があることを認めながら、
そこにも静かに目を向けることなのだと思います。
見ないようにしていたこと。
ずっと後回しにしていた感情。
本当は気づいていたこと。
言葉にはしなかった願い。
あるいは、
自分でもまだ知らないもの。
外側が静かになったとき、
それらは、
とても小さな声で語り始めます。
「孤月」。
ひとり、
空に浮かぶ月。
孤独という言葉には、
どこか寂しい響きがあります。
けれど、
ひとりであることと、
孤独であることは、
必ずしも同じではありません。
誰かから離れ、
情報から少し離れ、
期待からも離れ、
ひとりになる時間。
そこではじめて、
自分の声が聞こえることがあります。
誰かが望んでいる自分でもなく、
こうあるべきだと思っている自分でもない。
もっと奥にいる、
静かな自分。
孤月という音には、
そんな時間があります。
私たちは、
答えを外側に探しがちです。
誰かの言葉。
数字。
出来事。
兆し。
それらは時に、
大切な入口になります。
けれど、
最後にその意味を受け取るのは、
自分自身です。
だから、
外側に現れたものを見たあとには、
一度、
内側へ戻ってみる。
私は、なぜこれに惹かれたのだろう。
なぜ、この言葉が残っているのだろう。
本当は、何を望んでいるのだろう。
答えがすぐに出なくても構いません。
問いを置くだけでいい。
静かな水面に一滴を落とすように。
答えを探すのではなく、
その波紋がどこへ広がっていくのかを見てみる。
そこに、
今の自分がいるのだと思います。
幸運の兆しを見つけたあと、
次に必要なのは、
さらに大きな幸運を探すことではなく、
その光が、
自分の中の何を照らしたのかを見ること。
月が満ちていくように、
私たちの意識にも少しずつ光が届いていきます。
そして、
光が増えたからこそ、
今まで見えなかった影にも気づくことができる。
それは、
悪いことではありません。
むしろ、
自分をより深く知るために光が届いたということなのかもしれません。
感受し、
浄化し、
共時に気づき、
静けさへ沈み、
小さな幸運の兆しを受け取る。
そして今日、
もう一度、
自分自身へ還る。
内観。
外側へ向かっていた視線を、
静かに、
内側へ。
次の月は、
月宮|つきのみや。
その内側に見つけたものを受け入れたとき、
今度は、
満たされるということについて。
多幸。
月読は、
満月へ向かってさらに光を増していきます。
06|孤月|こげつ
内観
静けさの中で、自分の内側へと意識を戻してゆく。
光も影もそのまま見つめるとき、まだ知らなかった自分の輪郭が現れはじめる。
「月輪を迎える」
九つの響き
どこから聴いてもいい。ひとつだけでもいい。
今日は少しだけ、
自分自身のために。
月輪|つきのわ「九つの響き|全曲プレビュー」



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