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月読|つきよみ 第八篇

7 時間前
読了時間: 5分


第八篇|霽月|せいげつ

明晰


見えることと、


わかることは、


少し違います。



たくさんのものが見えていても、


心の中が騒がしければ、


本当に大切なものを 見失ってしまうことがあります。



反対に、


すべてが揃っていなくても、


ある瞬間、


驚くほど静かに、


「わかる」


ことがあります。



第八曲「霽月」に込めたものは、


明晰。



ここまで月読は、


ひとつずつ、


心の中にあったものを巡ってきました。



感受。


浄化。


共時。


瞑想。


幸運。


内観。


多幸。



受け取り、


ほどき、


つながりに気づき、


静けさへ沈み、


小さな兆しを見つけ、


自分自身を見つめ、


そして、


すでにそこにあった幸せを受け取る。



そうして少しずつ、


心の中にあった余分な音が

静かになっていく。



すると、


今まで見えなかったものが

見えてくることがあります。



新しい答えが加わったからではありません。



むしろ、


余計なものが減ったから。



霽月。



雨が過ぎ、


雲がほどけ、


その向こうにあった月が現れるように。



月は、


雲がなくなったから

生まれたわけではありません。



ずっと、


そこにあった。



見えなかったのは、


そのあいだに

何かがあったからです。



私たちの心にも、


似たことが起こります。



不安。


期待。


思い込み。


誰かの価値観。


過去の記憶。


まだ起きてもいない未来。



それらが重なるほど、


目の前にあるものを、


そのまま見ることが

難しくなっていきます。



だから、


明晰になるということは、


何か特別な知識を

手に入れることではないのかもしれません。



何を足すかではなく、


何が曇らせていたのかに

気づくこと。



そして、


その雲が少し晴れたとき、


そこに残ったものを見る。



それが、


自分にとって本当に大切なものなのかもしれません。



今日は、


中秋の名月。



けれど、


月はまだ、


天文学的な意味では

完全な満月ではありません。



満ち切るのは、


もう少し先。



それでも、


私たちは今夜の月を

「名月」と呼びます。



このことが、


とても美しく感じられます。



完全でなくても、


美しい。



すべてが揃っていなくても、


澄んで見える。



答えをすべて持っていなくても、


進む方向がわかることがある。



完璧であることと、


明晰であることは、


同じではありません。



むしろ、


「まだ足りない」


という思いから離れたとき、


初めて見えてくるものがあります。



前回の「月宮|多幸」では、


不足からではなく、


満たされた場所から進むことについて

綴りました。



すでにあるものに気づく。



すると、


「もっと」


という声が、


少しだけ静かになります。



もっと欲しい。


もっと認められたい。


もっと確かな答えが欲しい。



その声が静まった場所に、


今度は、


とてもシンプルなものが残ります。



自分は、


何を大切にしたいのか。



どこへ向かいたいのか。



何を手放していいのか。



誰といたいのか。



何をつくりたいのか。



それは、


大きな啓示のように

現れるとは限りません。



むしろ、


静かです。



「これでいい。」


そんな小さな感覚として

現れることがあります。



けれど、


その静かな感覚には、


不思議な強さがあります。



迷いがなくなるのではない。



未来がすべて見えるわけでもない。



ただ、


自分の中で、


ひとつの方向が

澄んで見える。



それだけで、


人はずいぶん遠くまで

歩いていけるのだと思います。



「月輪|つきのわ」という作品も、


制作の途中で、


すべてが最初から

見えていたわけではありません。



ひとつ進む。


立ち止まる。


またひとつ見える。



その繰り返しでした。



けれど、


余分なものを削り、


何度も問い直していくうちに、


最後には、


「ここだ」


と思える場所が現れました。



明晰とは、


迷ったことがない人の状態ではなく、


迷い抜いたあとに、


残ったものを

静かに見ることなのかもしれません。



霽月。



雲が晴れた夜の月。



光そのものが

強くなったのではなく、


遮っていたものがなくなったことで、


本来の光が届く。



私たち自身も、


本当は、


何かを新しく手に入れなくても、


すでに知っていることがあるのかもしれません。



ただ、


少し曇っている。



だから今日は、


答えを増やすのではなく、


少しだけ静かにしてみる。



そして、


今の自分にとって、


本当に大切なものを

ひとつだけ見つめてみる。



すべてを決めなくてもいい。



完全でなくてもいい。



ただ、


そこだけが澄んで見えるなら。



それはもう、


十分な光なのだと思います。



感受し、


浄化し、


共時を受け取り、


瞑想へ沈み、


幸運の兆しを見つけ、


内側を見つめ、


すでにある多幸を受け取る。



そして今日、


そのすべてを通り抜けた先で、


静かに視界がひらいていく。



明晰。



月読は、


いよいよ最後の月へ向かいます。



次の月は、


月影|つきかげ。



調和。



光も影も、


満ちることも欠けることも、


ここまで歩いてきたすべてを、


ひとつの輪へ。



09|月影。



その最後の月で、


月読は再び、


最初の場所へ還ります。



08|霽月|せいげつ


明晰



曇りがほどけるように、


本当に大切なものが

静かに輪郭を取り戻してゆく。



すべてを知ることではなく、


今、自分に必要なひとつが

澄んで見えること。



それが、


明晰なのかもしれません。





──────────


九つの響き


どこから聴いてもいい。

ひとつだけでもいい。



今夜は、


音の向こうにある静けさまで。



月輪|つきのわ


「九つの響き|全曲プレビュー」



 
 
 

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