月読|つきよみ 第九篇

月影|つきかげ
調和
満ちるということは、
何かを足し続けることなのでしょうか。
ひとつ。
またひとつ。
光を重ね、
最後には、
欠けたところが何もなくなること。
けれど、
ここまで月を見つめてきて、
満ちるということは、
少し違うのかもしれないと感じています。
光だけになることではない。
影をなくすことでもない。
これまで通ってきたもの。
受け取ったもの。
手放したもの。
見つけたもの。
そのすべてが、
ひとつの場所へ静かに還っていくこと。
第九曲「月影」に込めたものは、
調和。
今日、
月は満月を迎えました。
新月の暗闇から、
ほんの細い光が生まれ、
一日ずつ、
少しずつ満ちてきた月。
そして今、
ひとつの輪になりました。
月読も、
ここまで九つの月を巡ってきました。
感受。
浄化。
共時。
瞑想。
幸運。
内観。
多幸。
明晰。
そして、
調和。
最初に必要だったのは、
何かを変えることではありませんでした。
ただ、
受け取ること。
感受。
そこから、
自分の中に重なっていたものをほどき、
本来の静けさへ戻っていく。
浄化。
余白が生まれると、
それまで別々に見えていた出来事が、
不思議なほど重なり始める。
共時。
その意味を追いかけるのではなく、
一度、
静けさの中へ沈む。
瞑想。
そして、
暗闇の中に現れた小さな兆しに気づく。
幸運。
その光を追う前に、
もう一度、
自分自身へ戻る。
内観。
すると、
足りないと思っていた場所に、
すでにたくさんのものがあったことに気づき始める。
多幸。
満たされることで、
それまで曇っていたものが、
少しずつ澄んでいく。
明晰。
そして最後に、
それらすべてが、
ひとつの場所へ還っていく。
調和。
けれど、
調和とは、
すべてが同じになることではないと思っています。
光と影。
静けさと動き。
喜びと悲しみ。
強さと弱さ。
外側と内側。
どちらか一方を消して、
ひとつになるのではない。
違うものが、
違うままそこにありながら、
互いを否定せず、
ひとつの響きをつくる。
それが、
調和なのかもしれません。
音楽も同じです。
高い音。
低い音。
響く音。
消えていく音。
そして、
音と音のあいだにある静けさ。
それぞれが、
それぞれの場所にあるからこそ、
ひとつの音楽になる。
フラクタス・ハルモニア™もまた、
異なる響きを、
ひとつに塗りつぶすためのものではありません。
それぞれが輪郭を持ちながら、
ひとつの秩序の中で響く。
そこに、
私たちが求めてきた調和があります。
「月影」。
月そのものではなく、
月の光が、
別の場所へ届いたときに現れるもの。
水面へ。
地上へ。
誰かの窓辺へ。
そして、
私たちの内側へ。
光は、
届く場所によって姿を変えます。
けれど、
その源は同じです。
私たちもまた、
誰かと同じになる必要はないのだと思います。
それぞれが、
違う場所にいて、
違うものを感じ、
違う人生を歩いている。
それでも、
ある瞬間、
同じ光を受け取り、
響き合うことがある。
そのとき、
ひとりでは生まれなかったものが生まれる。
調和とは、
完成された静止した状態ではなく、
異なるもの同士が、
響きながら生まれ続けるものなのかもしれません。
そして、
ここでひとつ気づきます。
調和まで辿り着いたからといって、
すべてが終わるわけではありません。
整ったからこそ、
また、
小さなものを受け取れるようになる。
つまり、
調和の次にあるものは、
もう一度、
感受。
九つの月は、
一直線ではありません。
最後まで進むと、
最初へ還る。
感受し、
巡り、
調和し、
そしてまた、
受け取る。
ひとつの輪です。
だから、
月読は今日で終わります。
けれど、
この巡りそのものが終わるわけではありません。
月が満ちたあと、
また欠けていくように。
そして、
再び満ちていくように。
私たちもまた、
何度でも巡ることができます。
一曲から始めてもいい。
途中から聴いてもいい。
今の自分に必要な音だけを選んでもいい。
けれど、
もし九つを巡ったなら、
最後に、
もう一度最初の「月輪」を聴いてみてください。
最初に聴いたときとは、
少し違って聞こえるかもしれません。
音が変わったのではなく、
それを受け取る自分が、
少し変わっているから。
一曲は、入口。
九曲は、輪。
月読は、
満月とともに、
ここでひとつの輪を閉じます。
感受から、
調和へ。
そして、
調和から、
もう一度、
感受へ。
月は、
いつもそこにありました。
これからも、
満ち、
欠け、
そしてまた、
満ちていきます。
その光を、
どのように受け取るのか。
その答えは、
いつも、
私たちの内側にあります。
09|月影|つきかげ
調和
すべての響きが、それぞれの輪郭を残したまま、
ひとつの場所へ静かに還ってゆく。
光と影が重なるとき、内側にひとつの調和が生まれはじめる。
月読|つきよみ
全九篇 完
「月輪を迎える」
九つの響き
感受。
浄化。
共時。
瞑想。
幸運。
内観。
多幸。
明晰。
調和。
九つの月を、
ひとつの輪として。
月輪|つきのわ「九つの響き|全曲プレビュー」



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